寒くて寂しいのは、

[雨降るある日]
[少し汚れた白い仔猫]
[私は見つけた。]

ザーザーと激しく雨音を立てる空からの水の恵が降り注ぐ。空は、灰色。

「あめ、」

雨が降れば傘をささずに濡れることは、私の中では常識で。だけど、端から見ればおかしい馬鹿な子が濡れているという異様な光景。それが、私は好きだった。

雨は、総てを流してくれる。何もかも。私の感情も汚れも悩みも苦しみも痛みも環境も、全部全部。涙だって隠せる。

そう思う。そう思わないと、暗示しないと、どうにかなってしまいそうで。どうにかなってもいいけど、まだなってはいけなくてなれなくて。

ぎゅうぎゅうと痛む胸の苦しみは、きっと何かの病気のせい。もし病気じゃなかったら、誰かが呪ってたり、幽霊に操られたり、鷲が胸辺りを掴んでるんだ。

いつもならグッと堪える涙を溢す。雨の日だけ、特別に流す。あとは、余程のことがない限り泣いたりしない。

「にゃぁ」

突然足元から聞こえた鳴き声。その源は、少し泥で汚れた白い仔猫。すりすりと私に甘えてねだる姿から、人間慣れしているのだろう。動物は好きでも嫌いでもないけれど、猫科は別で愛してやまなかった。

しゃがんで猫を抱き抱えた。一肌程ではないけど、それでも感じた温もりは十分な位暖かかった。

「君も独り?」
「にゃぁにゃぁ」

ただ鳴くことしか出来ない仔猫からは何もわからないけど、きっと独りだ。私と同じ、独り。

「あと、2時間したら帰ろうか。それまでは、此処にいて」

腕の中で気持ち良さそうに丸々仔猫を抱き抱えたまま、私はあと2時間雨に濡れる。どうせ、親はいない、バレない。

―――大丈夫。君はちゃんと守るから。

何をしても、犠牲にしても平気。自分のことはどうでもいいから、大切なものを護りたい。

「にゃぁ」
「今日から君はレイだよ」

ザーザーと激しく降る雨に打たれながら、私は猫を名付けた。色々な思いや感情をぐるぐるとかき回し、私はまた明日を生きる。

また、猫被り、傍観者で嘘つきで偽った私は、同じ日々を繰り返し、目的が終わればさようなら。

―――、嗚呼早く死にたいよ。

ただ違うのは、小さな大切な温もりがあること。

少女の想いは闇に紛れ消える。

[仔猫のレイ]
[ずっと、側にいて]

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